前回のブログから3ヶ月以上、さらに渡航から2か月近く経ってからのご報告…ほんとに筆不精で申し訳ありません…。
というわけで、表題のとおり、初めて琵琶を持って海外へ行って参りました。行先は、ハンガリーの首都・ブダペストです。
事の始まりは、今夏、ご近所の「装和きもの学院」さんのお教室で、琵琶の演奏をしたことでした。
夏休みの子ども着付け教室にて、伝統芸能に触れるコーナーを担当していたのです。
その際、学院の総長先生から「荻山さん、ハンガリー行かない?」と突然のお誘いが…!!
装和きもの学院さんでは、定期的に、海外での着物ショーを開催しておられるのですが、たまたま和楽器奏者に空きができたため「そういや近所に和楽器奏者、いてるやん」と、お声掛け頂いたというわけです。
漫然と「海外で演奏してみたいなあ~」と思ってはいたものの、具体的に動き出す前に降ってわいたチャンス。
行きます! と勢い込んで手を挙げたのですが、そこから怒涛の準備期間が始まりました。
まず、というか、この問題のみに注力していた感もあります。
どうやって、琵琶を海外まで持っていくか。
薩摩琵琶は、基本的に、飛行機の機内持ち込みはできません。大きいからです。
「継ぎ琵琶」といって、胴(ボディー)と鶴首(ネック)を2分割できるもの(これなら機内に持ち込めるサイズに収まります)もあるのですが、いかんせん、新たに作ったり探している時間がありません。
では、どうするか?
他のトランク等と共に預入荷物として持って行くしかない…!!
というわけで、作りました、ケース。
幸い、大阪府内にケースを特注できる会社を見つけたため、琵琶を持参してぴったりサイズにして頂きました。
内側はウレタン敷きで、しっかり琵琶を守ってくれる構造です。
※この写真では弦を張ったままですが、糸巻きは少しの衝撃でも折れてしまうため、実際に持って行くときは全て外しました。さらにタオル等で全身ぐるぐる巻きにしました。
この他にも、ショーの内容に合わせた曲の選定、持って行く着物をどうしよう、留守にする間の諸々手配、などとバタバタしているうちに、あっという間に9月18日、出発の日が来ました。
スーツケースと並べてもデカいですね。
これで関空をウロウロしていると、時々「こいつは何を運んでいるのか」という視線を感じました。
ちなみに、今回は行き帰り共にエミレーツ航空を利用したため、このサイズでも受け付けてもらえましたが、他の航空会社だと、サイズオーバーで超過料金がかかるかもしれないそうです。
無事に荷物も預け、ドバイ経由で、ハンガリーの首都・ブダペストへ。
空港で荷物を受け取ると同時に、中身を確認。琵琶は無傷でした。ホッ。
今回、ブダペストのハンガリアン・ヘリテージ・ハウスにて行われた「十二単と着物ショー」のメインは、舞台上で行う、十二単の着付け。
さらに、小袖や白無垢など、時代衣装の紹介もあります。
私が担当したのは、この時代衣装パートでの演奏でした。
先生方による十二単の着付け、無駄のない所作が本当に美しいんですよ~。
(本番は演奏していたため見られませんでしたが…)
ご一緒させて頂いた方々は皆さん着付けのプロなので、ちゃっかり私の着付けもして頂きました。
演奏したのは「蓬莱山」と「敦盛」です。
左の写真、よーく見ると、覆手(胴の下部にある、弦を取り付けている部分)に何やら挟まってますね。
これ、クリップ式のワイヤレスピンマイクです。送信機はお太鼓に収納しています。声も拾ってくれるし、撥の邪魔にならないし、待機中は外しておけるし、これは便利!
ちなみに、これを付けてくれた現地の音響スタッフの方、本番前に「You can do it!! You can do it!!!」と熱く励まして下さいました(笑)。
時代衣装パートが終わると、現地の学生さんたちがモデルとなる、振袖のショーに移ります。
ここでも、舞台上で振袖の着付けが披露されました。
出番の終わった私は、舞台袖で「がんばれ~!!」と心の中で叫びつつ舞台を見守ります。
ショーの間、私はずっと舞台と舞台袖にいたのですが、楽屋では、10名を超えるモデルさんたちへの着付けでてんやわんやだったそうで…。
全員がそれぞれの持ち場で奮闘し、無事にショーは終了したのでした。
ショーの前日には、ブダペストのカーロリ大学日本語学科で、着物についての特別講義に琵琶で参加しました。
演奏したのは「川中島」です。
日本語が堪能な学生さんも多く(ハンガリー語の同時通訳もして下さいましたが)私のつたない説明も熱心に聞いて下さいました。
中には「琵琶を習得するのには何年くらいかかりますか?」という質問も。ハンガリー人初(多分)の琵琶奏者、勧誘してくればよかったな~。
ここでは、浴衣の着付け体験が行われ、学生さんたちは大興奮!そして着付けの先生方はフル回転!!私は…邪魔にならないように隅っこでその様子を見守っていました。
ショーの翌日には、陸路スロバキアのブラチスラバを経由し、チェコのプラハへ。一仕事終えた解放感と共にプラハの町を満喫し、またドバイ経由で関空へと戻ったのでした。
帰りの便も、おかげさまで琵琶は無事でした。
が、今回は公演に同行した上にエージェントの方もいらしたので、スムーズに運搬できたのだろうと思います。
今後、個人で琵琶を海外へ持って行く場合は、今回のようにすんなりとはいかないだろうなあ…。
実際、海外にお住いの方で、トラブルに巻き込まれた方もいらっしゃるそうです。
この点、もう少し考える必要がありそうです。
ともあれ、こうして海外で演奏できたのですから、今回限りにしてしまうのはもったいない。
それに、せっかく作った琵琶ケース、とってももったいない。
というわけで、手探りながらも海外公演第二弾に向けて、ちょこちょこリサーチをしています。
また、ご一緒した着付けの先生方も気さくな楽しいお方ばかりで、門外漢の私にも優しく接して下さいました。
現地の学生さんやお客様も、暖かかったなあ…とブログを書きながら思い出に浸っています。
↑トイカメラで撮ったブダペストの名所。
今回お世話になった皆様、ありがとうございました!