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4/22「錦心流×鶴田流 薩摩琵琶 春の琵琶まつり」の思い出

まだ4月だというのに初夏のような日差しの中、大阪を離れて向かったのは、奈良。
JR奈良駅近くの「奈良ウガヤゲストハウス」さんでの演奏会に出演させて頂きました。

奈良ウガヤゲストハウスさんは、奈良でいちばん最初に開業したゲストハウスで、毎日、国内外のお客様で賑わう、スタイリッシュかつ何だか落ち着くお宿です。

オーナーの瀬戸一平さんは、琵琶奏者としてもご活躍なさっていて、演奏会へのご出演の他、宿泊のお客様のリクエストを受けて演奏することもよくあるそうです。

瀬戸さんは鶴田流、私は錦心流と、同じ薩摩琵琶でも流派は違うのですが、今回、一緒に演奏会をとお声掛け頂き、関西ではおそらく珍しい、他流派同士の演奏会と相成りました。

先のブログ記事でもご紹介しましたが、

薩摩国で発展した薩摩琵琶が全国に広まったのは、明治時代のこと。

その中で、伝統的な薩摩琵琶に、長唄など他の邦楽の要素を取り入れた「錦心流」という流派ができました。

流祖の永田錦心は、曲や演奏方法だけでなく、楽器の改良にも取り組みました。

一番細い四の弦を2本にすることで弦を切れにくくし、柱(ギターでいうネックの部分)も1つ増やすことで、演奏の幅を広げようとしたのです。

(上の写真、右の瀬戸さんがお持ちなのが改良型の琵琶、私が持っているのが旧来の形の琵琶です)

この改良に、永田錦心と共に取り組んだのが、女流演奏家・水藤錦穣。

完成した五弦五柱の新型琵琶は「錦琵琶」と名付けられ、水藤錦穣を宗家とする別流派ができたのです。

そして、錦心流琵琶から錦琵琶に転向し、後に独自の路線を確立する昭和の名人・鶴田錦史とその流れを汲む演奏家たちで構成されるのが「鶴田流」。

なので、このふたつの流派の演奏を聞くと、明治~昭和の薩摩琵琶の変遷が辿れるというわけです。

 

春にちなんだ曲をということで、私は「鞍馬山」と「おとぎ琵琶 兎と亀」を演奏しました。

「鞍馬山」は、鞍馬寺にいた頃の牛若丸の伝説をもとに作られた曲で、桜も盛りを過ぎた頃、人知れず貴船神社に詣でる牛若丸の前に、山伏姿の大天狗たちが現れ…というストーリー。

花吹雪の中で渡り合う、牛若丸と天狗たちの姿を想像しながら演奏しました。

「おとぎ琵琶 兎と亀」、なぜ春にちなんだ曲?とお思いかもしれませんが、何を隠そう「野にも山にも春が来た」という歌詞で始まるんです(笑)。

いつも通り、お芝居仕立ての顔芸満載で演奏しましたが、琵琶を聞いたことがある方も「こんな曲があるのね」と面白がって下さいました。

 

瀬戸さんは「春の宴」を演奏されました。

源氏物語の一場面を題材とし、弾法(琵琶の奏法)の見せ場が多く、初演時はその斬新さに観客を驚かせたという曲です。

私も生で聞くのは初めてでしたが、優雅な舟遊びや宴の様子が目に浮かぶような、素晴らしい演奏でした。

 

演奏後は、ふたつの流派の違いなどを対談形式でお話し、体験コーナーも設けました。

私も鶴田流の琵琶を弾かせて頂きましたが、何というか…思った以上に勝手が違うんです。

「この位置で、これくらいの力加減で、この高さの音が出る」というのを感覚的に捉えて弾いているんですが、その感覚がまるで違っていて、これほど変わるものなのか、と。

(まあ、柱が増えているし、調弦も異なりますから、当たり前といえば当たり前なんですが…)

 

終演後、瀬戸さんのお母様が差し入れて下さった苺大福を頂きながらの琵琶談義。

次から次へと話題が飛び、ついつい長居してしまいました。

 

奈良ウガヤゲストハウスさんでは、今後も、定期的に演奏会を開催なさるそうです。

(次回は津軽三味線とのコラボとのこと!)

今後とも、切磋琢磨しながら楽しく進んでいけたらと思います。

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